汝、星のごとく 凪良ゆう

強さ、弱さ、誠実さ、狡猾さ、優しさ、厳しさ

相反する人間性のグラデーションが作中の登場人物全員から感じられて、この矛盾のようなものが人間というものなのではないか?

と感じます。

主人公2人よりは大分マシですが私も母親との関係性に葛藤のようなものを抱えていますので

読んでて辛い部分もありました。

個人的には3章の結びの文章

それでも、私は明日死ぬかもしれない男に会いに行きたい。 幸せになれなくてもいいのだ。

ああ、ちがう。 これが私の選んだ幸せなのだ。 わたしは愛する男のために人生を誤りたい・・・・の部分が好き

プロジェクト ヘイル メアリー

この小説を読むまでSFは苦手でした。

海外の小説も翻訳の違和感があり苦手でした。

説得力のある設定 ユーモアがありわかりやすい翻訳 ページをめくると過去 現在 地球 宇宙と場面変更がおきる微調整

帯に岡田斗司夫さんが1ページ目の1行目から面白いと書いてましたが 

正にそのとおりです。

1章で主人公は記憶のない状態で目覚め。

振り子の実験で地球の倍の重力が働いていると計算し自分が地球ではない場所にいる事に気づきます。

ここからずっと面白いです。

私 以外の人がこの話をよんでどんな感想やどんな解釈をするのかは分りませんが

私はプロジェクトヘイルメアリーは友達を助ける話だと思いました。

もし このブログを読んでくれる人がいたら是非これだけは読んで欲しいお話です。

スモールワールズ  一穂みち

本屋大賞にノミネートされていて、気になったので読んで見ました。

一話80ページくらいの短編が6つの短編集です。

全6編の伏線が混じりあってみたいな話を期待していたのですがそういうのではありませんでした。

思っていたのとは違いましたが、短編一話のクオリティがとんでもなく高いです。

主人公の一人称の視点の直球勝負や手紙の往復などそれぞれ別の形で書かれてますが、

全部おもしろい。

強いて言えば愛を適量が好きでした。

それぞれの話にちょっとだけ繋がりを作る隠し味的なのも良かったです。

 

慟哭  貫井徳郎

これも友人におすすめされて読みました。

幼女連続誘拐殺人の犯人を追う警察官の話です。

もし、私に家庭や子供があれば、もっと犯人や警察官達、それぞれの父親としての心境に共感できたのかもしれませんが、

個人の感想としては、そこには共感はありませんでした。

しかし 推理小説としての仕掛けは凄いです。

注意深く文章を追って、被害者の情報を精査すれば作者の仕掛けに気づける可能性を残しているのも好印象でした。

同志少女よ敵を撃て  逢坂冬馬

第二次世界大戦ソ連に侵攻したドイツ軍に自分の村を虐殺された主人公が、母親を殺した狙撃手とドイツ軍、家族写真を燃やした教官に復讐する為、狙撃手として訓練を受け大戦を戦って行きます。

戦闘描写が秀逸で脳裏にプライベートライアンの映像が再生されてるような感覚を覚えました。

主人公側の目線で読んでいると忘れそうになりますが、 敵も味方も同じ人間です。

残酷だと思っていた敵が人間らしい一面を見せたり、高潔だと思っていた味方が逆をやったり。

エンタメとしても良作ですが、それ以上に人間の善性や協調性が悪い方に転んだり、戦場の道徳など考えさせられました。

6人の嘘つきな大学生  浅倉秋成

初めて読む作家さんで、どんな話を書くんだろうと思い読みました。

色々、小説は読む方だと思いますが、どんな話とも似てない浅倉さんにしか書けないような小説だと思います。

ジャンルとしてはサスペンスだと思います。

誰も殺されたりはしません。

でも、犯人の行為によって6人の人物が失ったお互いの信頼だとか未来だとか、そこに至る緊張感はサスペンスと言うのがしっくりくる気がします。

私の文章力では上手く表現できず申し訳ないですが、他人に進めて感想を聞いてみたい一冊でした。

星を掬う   町田そのこ

元夫にひどいDVを受け続けている主人公が、気紛れに夏休みの思い出をラジオに投稿します。

そのエピソードがたまたま幼い頃に別れた母親の関係者の耳に届き、再会し物語が進んで行きます。

前半は人間の弱さや身勝手さがひたすらに際立って気分が悪くなります。

中盤以降ようやくそれぞれの本音や、自分自身への俯瞰が入りホッとしました。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが

序盤は登場人物がみんな嫌いでしたが

それぞれが自分と向き合い弱さや自分の視野の狭さを認識して歩き出す姿に

少し泣けました。